ゼロから始める新卒社会人の雑記

新元号が発表された2019年4月1日、新社会人となった私はブログを始めました。 1から。いいえゼロから!

有機農業ラブコメ②

「ゆうきぶ~有機栽培同好会部へようこそ!~

 

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前回のあらすじ

 

部活動紹介から逃げ出して帰ろうとした才場侑樹だったが…?

 

 

  

 

 

◆◆◆

 

ここで時間をかけてしまったのが命取りだった。

 

軽くなったカバンを持ち、教室の扉を開けると目の前にはアホ毛があった。

 

アホ毛???

 

「ちょっと、才場くん!!体育館にいないと思って探してみたら教室にいるなんて!…あ、もしや帰ろうとしてるの!??そんなことだめなんだからね!!!」

 

アホ毛が喋ったーー!!

 

…まあ、そんなことはなく、目線を下に向けるとそこには中学生に見える女の子が立っていた。

 

「どうしたのかなー?中学校は併設している隣の建物だよー。もしよかったらお兄ちゃんが案内してあげようか?さあまずは玄関に行こうねー。」

 

そう言いカバンをしょい直し、足早に玄関に向かおうとしたら…。手をつかまれた。

 

「怒るよ。才場くん?後、私は先生だから。君のクラスの副担任だから。」

 

やっぱりこんなのじゃごまかせるわけもなかった。後、超怒ってる。怖い。だって見た目年齢中学生なんだもん…。

 

この中学生もとい俺のクラスの副担任の先生である女性の名は、「芥田・グリーン・米子」と言い、

みんなからはアグリ先生と呼ばれている。

彼女は、アメリカ人とのハーフであり、大学までアメリカで過ごしていたらしい。また、大学の博士号を22歳で取得した天才であり、23歳には日本で准教授となったすごい人だ。

そして今は、縁あって赴任した大学の付属校であるこの高校で研究の傍ら、教育を行っている。

ちなみに米子と言うと怒る。

 

「ごめんなさい。つい咄嗟に言ってしまいました。…じゃあまた明日、アグリ先生。」

 

「さようなら~。って待ちなさい才場くん!私は君を探しに来たんだから。いいからカバンを置いて体育館に来なさい。」

 

ノリツッコミもばっちりである。

…もう少しだったんだけどな。観念してアグリ先生と一緒に体育館に向かうことにした。彼女が歩くたびにトレードマーク(本体)のアホ毛がぴょこぴょこと揺れている。

どうやらもう、そこまで怒っていないようだ。

 

「それにしても、アグリ先生よく俺がいないって気づきましたね?体育館に入ってからの点呼はなかったはずじゃ?」

 

「そんなことしなくても君がいなくなったら気づくわよ。それに出席番号が前後の生徒も急にいなくったと不思議がっていたし。」

 

どうやら最初から無理な脱走だったみたいだ。

アグリ先生は元々父親の知り合いなのと、学校でのある出来事をきっかけに色々と目をかけてくれている。それが裏目に出てしまったようだ。

今度から脱走する時は、アグリ先生のことも計画に入れなくては…。

そんな反省をしていると、アグリ先生が、

 

「今日の部活動紹介では、私が顧問を受け持っている部活の紹介もあるの。って言っても厳密には去年出来たばっかりで、まだ同好会ではあるけど…笑。あの子たちにとっては部に昇格するチャンスだからしっかり見届けないとね。」

 

そう言うアグリ先生は少し嬉しそうだった。へえ、アグリ先生顧問やっていたんだ。こんな嬉しそうに顧問をする部活(今は同好会らしい)って何だろう?少し気になったけどまあ、それはじきに分かることだろう。

 

「もう部活動紹介が始まってるから、邪魔にならないように私と後ろで見てましょう。出席番号の前後の生徒には後でちゃんと謝っておくのよ?」

 

「え、えぇ。分かりました。」

 

どうやら工藤先生には報告しないみたいだ。

過ぎた問題をわざわざ話すようなことをしない効率重視な考え方は、アグリ先生の魅力の一部だと思う。

 

体育館の後ろの方でアグリ先生と腰を下ろすとちょうど何かの部活が終わったようだった。まばらな拍手と共に次の部活が準備に取り掛かる。

進行具合を見るに、どうやら既に半分程終わったようだった。

よっしゃ。

 

「どうやらあの子たちの同好会はまだみたいね。」

 

この後も何のトラブルもなく消化されていった。

どの部活に入るか期待に目を輝かせているであろう1年生、そして、期待に答えようとする2年生の両者の姿は俺から見て眩しかった。

なんていうか、青春をしていた。そしてひどくムカついた。俺だって青春に憧れなかったわけではない。

クラスメイトと談笑したり、部活とバイトで忙しい日常を送ってみたかったりしたかった。

 

でも、…できないのだ。

 

俺と青春をしている学生の距離は体育館での距離のように明確に離れていた。分かれているといった方が正しいだろう。二度と交わることのない距離が…。

まあ、俺が脱走したから距離があるんだけど…

 

そんなことを考えているとなんだか直視できなくなってしまって目を伏せた。もう部活動紹介なんか早く終わってしまえと願いながら。

 

「……才っ、……才…くん。…才場くん!!起きて!次、私が受け持っている同好会の番だよ!!」

 

「すみません、つい寝てしまいました。…それで、アグリ先生。アグリ先生が受け持っている同好会っていうのはどんな同好会なんですか?」

 

「あれ?言ってなかったっけ??私が受け持っている同好会はね、」

 

有機栽培同好会よ。」

有機栽培同好会です!!」

 

 

次回へ続く。

 

AscA

 

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