ゼロから始める新卒社会人の雑記

新元号が発表された2019年4月1日、新社会人となった私はブログを始めました。 1から。いいえゼロから!

有機農業ラブコメ⑲

ゆうきぶ~有機栽培部へようこそ!~

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前回のあらすじ

 

 風呂上がりにスマホを見ると日潟からメッセージが届いていた。

才場はメッセージを開くと、そこには、次の日の放課後、生徒会準備室に来てほしい旨が書いてあったのだ。

集団リンチされると思い中二の頃に買ったスタンガンまで持ちだしてきた才場の目の前には、あの日の事件以来一度も話すことのなかった日潟の土下座した姿がそこにはあり…。

 

 

 

 

滑らかな動作で土下座に移行していたが、その動きは膝をついたところで止まってしまった。

 

なぜなら、向かいに立っていたはずの男が、クラスで上位カーストであるはずの日潟が土下座していたからだった。

 

「あの時は本当にすまなかった!!今更、遅すぎる、虫が良すぎるとも思うけどとにかく謝らせてくれ…!!!」

 

いったいどうなっているんだ???

 

「お、おい日潟とりあえず顔上げてくれ。そして土下座もやめてくれ…。」

 

「それに…、日潟は悪くないだろ…。」

 

悪いのは俺の体質であり、俺自身なんだ。

 

「いや、俺があの時調子乗ってあんなことしなければ…。才場は止めろって言ってくれていたのに。」

 

まあ、確かにそれはそうだけど。

 

「どうせ、こんな体質じゃいずれあんなことになっていたのは目に見えてたよ。だから日潟が悪いんじゃない。それと…。俺からもずっと謝りたかったんだ。日潟の大事な試合をつぶしてしまって悪かった。」

 

そう言って俺も土下座をした。

高校生の男2人が誰も来ない部屋で土下座し合っていた。傍から見るとめちゃくちゃおかしな光景である。

 

絶対に見られたくねえ…。

 

しばらくするとどちらからともなく笑いが起きた。

 

「土下座し合っているって変な光景だな笑。それに、結局新人戦は出れなかったけど今はサッカー部でレギュラーを取れているし、なんならあの時病気になってから身体が強くなった気がするんだよな。……だから、まったく才場に恨みなんてありはしない。むしろ感謝してるくらいだよ。」

 

「…なら、よかったよ。日潟の活躍は教室で聞こえてくる噂話程度しか知らないけど、次期部長候補なんだって?おめでとう。」

 

実際のところ、反骨精神が人を強くするなんてことは、結果が伴った後に思い出を懐かしむことでしか答え合わせなんてできやしない。

結果が失敗なら日潟はそのまま俺の事を恨んでいただろうし。

 

でも…、

仲直りなんて案外曖昧なものじゃないか?

 

「ありがとう。けどこれからもっともっと頑張らないとな…。」

 

「そう言えば、才場はアグリ先生と林檎姉妹、それに会長がやっている部活に入ったんだって?」

 

「そうなんだよ。アグリ先生がさ…。」

 

それから俺たちは互いの近況を愚痴混じりで語りあった。

いや、俺は愚痴しか言ってなかったわ。不純物100%。濃縮還元はしていません。

 

ちなみに濃縮還元100%は厳密には100%ではなく濃縮液に水を足して100%に薄めているそうだ。

 

…そんなことはどうでもいいな…。

 

…話によると、日潟は俺との一件以降食事に気を遣うようになり、生物の教師で有機部(同好会だけど)の顧問であるアグリ先生に相談していたそうだ。その中でアグリ先生に俺の体質や近況について教えてもらっていたみたいだ。

何故家庭科の先生じゃないのかって話は…、1年目の家庭科では手芸が主だったからイメージが湧きづらかったのだろう。

 

ふと、外を見ると、日が傾きはじめ夕方へと刻が進んでいた。

 

「…才場。俺を許してくれるか?」

 

日潟は不安なんだろう。別に俺との関係なんか切っても変わんないとは思うが、過去とのしがらみやひっかかりっていうのはふとした時に強く思い出してしまうから…。

でも、俺はまったく日潟の事に関しては怒っても無いし、なんなら俺の方こそわるいことをしたと思っていた。

だから…。

 

「許すもなにも最初から怒ってないよ。逆に俺からも…。」

 

「日潟、俺を許してくれるか?」

 

こう言うことしかできなかった。

 

「ありがとう…。」

 

日潟から俺に向けていた後悔や責念の目が消えていったような…気がした。

 

こうして俺たちの過去の清算、つまるところ仲直りが終わった。

 

生徒会の用事があると言う日潟と別れると、俺は有機栽培同好会の部室へと向かった。

当然大遅刻ではあるが収穫もあったため悪びれもせず堂々と入った。

 

「遅くなりました―。今日は何をやるんですか?」

 

ちなみにここですみませんとか入れてしまうと、自分の非を言葉で認めることになるのでいれないのがおすすめです。

言質取られるのって結構面倒くさいからね!ソースは俺。

 

「「「………………。」」」

 

とか思っていたら着替えや用具の準備を終えた3人がそれぞれ微妙な表情をしてこっちを見ていた。

 

…なんだろう?

 

アグリ先生はなんか微笑みの視線だけど、林檎は泣きそうな目でかわいそうだと言わんばかりだし、蜜柑に関してはゴミを見るような目だ。

 

夏にその目で見られるだけで体感温度下がりそうですね…。

 

身体をブルっとさせながら原因を考えてみたが全く思いつかない。

一体何が起きたんだ??

 

「才場くん、これはいったいどういうことですか…。」

 

ゴミにいやいや近寄るように蜜柑がスマホを見せてきたので、何のことやらと覗いてみると、そこには俺と日潟が土下座し合っている写真が写っていた。

 

 

 

次回に続く

 

 

 

前回

 

shinsotsuzakki.hatenablog.com

 

 

 

次回

 

shinsotsuzakki.hatenablog.com

 

 

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