有機農業ラブコメ⑮
ゆうきぶ~有機栽培部へようこそ!~
前回までのあらすじ
放課後、クラスの人に注目されて動揺した才場は廊下で女の先輩とぶつかってしまう。
ぶつかっている最中に学級委員の棚橋に追いつかれた才場は、昔友達ような存在であった日潟に連絡をするよう言われた。
最後の方はほとんどもごもごとしか口が動かなかった気もするが、棚橋はこちらを振り返らずに手を挙げた。伝わったと信じてもよさそうだ。…てか、棚橋イケメンで良い奴とか「かっこ良い奴」かよ。
…紛らわしい!
◆◆◆
今日は棚橋とその取り巻きに見られていたせいかなんか疲れたな…。
………。
よし、帰ろう!帰ってゆっくり寝よう!!
そう思い、アグリ先生に欠席の連絡を入れるためスマホを開くと、アグリ先生からこんなメッセージが届いていた。
「今日、疲れたからって帰っちゃだめだよ!」
この人エスパーかよ…。っていうか気づいていたなら助けてくれよ…。
俺は構わず、「今日は疲れて体調が悪いので帰ります。」と返信した。
…すると、ちょうどスマホを開いているところだったのかすぐに既読がついた。
返事もすぐに来るだろうと、LINEを開きながら歩きスマホで下駄箱へと向かっていると…、
「だめだよ?」
目の前にアグリ先生が立っていた。
ご丁寧にLINEにも「だめだよ?」の文字を入れて…。まるで、メール送りました電話をする会社員みたい!先生ったら有能会社員なんだからっ!!
「本当に体調悪そうだったらしょうがないかなって思ったけど、才場くんにはありえないことだったね。」
そう言ってアグリ先生は一人でくすくす笑っていた。なんだこの先生、めっちゃ腹立つな…。
「風邪はひかなくても疲労にはなるんですよ。今日は、棚橋とその周りのやつらに事あるごとに見られていたので神経が衰弱してしまいまして…。なので、今日は家で休ましてください。」
言葉と同時に顔や姿勢から疲れてぐったりしている様子を醸し出しておいた。
遊園地に連れられたお父さんみたいな感じで…。まあ、おれ父親と遊園地行った事ないから想像だけど。
「あれ…、本当に疲れているみたいだね。でも、今日は人手がいる作業があるからなぁ…。その作業が始まるまでは部室で休んでていいから部活に来てもらってもいい??お願いっ!」
まあ、ここらが引き際かな…。このまま帰っても寝つきが悪いだろうし、決して、決して仮病ではないが何だか申し訳なくなってくるだろうしな。部室で休めるなら休ませてもらおう。
「分かりました。部室で休ませてもらいます。何時頃に作業に行けばいいですか?」
「ありがとう!うーん、じゃあ17時半頃に校庭の方の圃場で作業しようと思っているけど…。どうせ一回戻ってくるからその時に一緒に行こう!」
「了解です。じゃあ、部室で待ってますね。」
こうして、俺はアグリ先生と一緒に部室に向かうことになった。
◆◆◆
「じゃあ、安静にしててね~。部室にある飲み物とかは勝手に飲んじゃっていいから。食べ物は…。」
「私のプリンは食べちゃダメだからね!名前書いてあるから!!」
「人の目線で疲れるなんてだらしないですね…。運動不足で体力が低下しているんじゃないですか?周りの人間なんて野菜か果物だと思えば何とも思いませんよ。」
結城姉妹に事情を伝えると妹の方には小言を言われたが特に強制作業をさせられることもなく部室で休んでていいことになった。…ってか冷凍ミカンさん周りに対してそんな冷たい評価していたのね…。まじ氷菓。
「分かりました。時間までゆっくり休んでいますね。」
3人が部室から出ていくと、俺は一息つくために電子ケトルのスイッチを入れて飲み物とお菓子の物色を始めた。
「えーっと、緑茶、ほうじ茶に色々な種類の紅茶、コーヒー、ココアって…なんでもあるな。後は、前にアグリ先生が持ってきたもらい物のクッキーに…ああ、このプリンか…。」
冷蔵庫を開けると、そこにはサインペンででかでかとリンゴと書かれたプリンがあった。食べてやろうかと思ったが…、食べ物の恨みは怖いって言うしな。それに林檎まで俺にあたりが強くなったらいよいよいじめで学校休みそう…。言わば林檎が俺にとってのボーダーだったか。よし、今度からはもう少しフランクに接して嫌われないようにしよう。
そんなことを考えながらコーヒーとクッキーを適当に用意すると、ソファに座りこみ、宿題やスマホをいじって暇をつぶした。
人間一息つくと、同時に眠気に襲われるものである。
俺は気が付くと寝てしまっていた。
「ガチャン」
何かが閉まる音がして、俺は夢の世界から引っ張り出された。
まあ、おそらくアグリ先生たちが戻ってきたのだろう。惰眠をむさぼってしまったお礼としてせめてこの後の作業は頑張ろう…。そう思い、瞼を開け重い身体を持ち上げると…。
そこには空になったリンゴのプリンがあるだけだった。
え、何こっわ。
ナニコレ心霊現象?部活動をサボって寝てた罰?
と、オカルト現象のせいにしようかと思ったが、現実的なところは俺が寝ている間にアグリ先生たちが戻って来て、林檎がプリンを食べた後、起こさないように静かに出ていってくれたのだろう。
というかそうじゃないと困る。
その一連の動きに気づかなかったほど寝こけていたなんて…、思ったよりも疲れているのだろうか。そんなことを思いつつも、グッと伸びをして身体を無理やり起こし、自分に鞭を入れた。
「えーっと、確か校庭の圃場だっけ…。17時半にはまだちょっと早いけど行ってみるか。」
俺は体育着に着替えると、校庭の方に行ってみることにした。
◆◆◆
次回へ続く
前回
もうちょい更新頻度上げれるようにします。