ゼロから始める新卒社会人の雑記

新元号が発表された2019年4月1日、新社会人となった私はブログを始めました。 1から。いいえゼロから!

有機農業ラブコメ⑤

「ゆうきぶ~有機栽培同好会部へようこそ!~」  

 

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前回までのあらすじ

 アグリ先生に連れられて有機栽培同好会に来た才場は、ほとんど強引にだが初めての同好会活動をすることとなった。

 

 

「…そういえば、結局その種って何の種なんですか?」

 

「それはね!二十日大根だよ!!」

 

「何か聞いたことあるような、ないような…。」

 

ラディッシュとも言われている野菜ですね。赤くて小さい大根のような野菜だと言えば分りやすいでしょうか。栽培するのに面積も取らないのでこのくらいのプランターでも簡単に育てられます。」

 

そう言って悠木妹は、お姉ちゃんと一緒に仲良く持っていた茶色い容器を揺らした。

 

「そして!何といってもそのプランター有機栽培用の培養土さえ入れれば簡単に有機栽培ができるの!才場くんに有機栽培同好会を楽しんでもらうためのまずは入門編ってところね。4月の終わりには二十日大根パーティーができるよ!」

 

そう言って、単色ガールズ(一人は一応ウーマンなのだけれど)は、二十日大根パーティーの事で盛り上がっていたが、そもそも二十日大根ってどうやって食べるのかいまいち分かっていない俺は楽しめないのであった。

あと培養土が詰まった袋をずっと二つも背負ってるから重い…。

 

中庭に着くと以前は花壇だったのだろう場所に、有機栽培同好会の立て看板が刺してあった。だいたい10m×10mほどの大きさで、周りには農業に使うのだろう用具や土の入った袋が置いてあった。

 

「へえー。こんなものが中庭にあったのか…。」

 

有機栽培同好会の農地ではまだ、土を盛り上げた畝と呼ばれるものと、その隅っこでネギが栽培されているだけであったが、その農地の周りでは一面に花が植えられていた。花の名前は分からなかったけど、とにかくきれいで、また手のかかったものだということは分かった。

 

「ほんとはすぐにでも有機栽培始めたかったんだけどね~。まだ、土中の農薬が抜け切れていなかったみたいだったからできなかったんだ。でも、せめて、これから入ってくる一年生たちに見てほしいと思って花を植えたんだ!!」

 

「あれが菜の花、隣がハルジオン。あっちには、タンポポ、チューリップもありますね。他にはサクラ草、アネモネアルストロメリアクレマチススイセン、パンジー…。リンゴがとにかくいっぱい植えたいっていうから植えたけど何だかぐちゃぐちゃしちゃいましたね。」

 

そんなことない。

花の名前は半分も知らなかったけど、様々な花がひしめき合って咲いている姿は、学校のようで…。花も、あったのかもしれない蕾も摘み取られてしまったはみ出し者の俺には、…とても羨ましかった。

 

「だから、まだ本格的には圃場で栽培したことないんだよねー。簡単にできるガーデニング作物をプランターでやるくらいで。今まで同好会で作った野菜は、豆苗やホウレンソウくらいしかないの。」

 

「後は、アグリ先生が勝手にぶっ刺して栽培してるネギぐらいですかね。」

 

「農地が空いてるんだから有効活用したっていいじゃない!…。とにかくっ、ここの土、それから校庭の圃場も最後に農薬が撒かれてから4月で3年になるし、ようやく本格的に有機栽培ができるわね!」

 

どうやら話によると、有機栽培をするには残留農薬がない土が必須なのだが、完全に農薬が抜けきるには最後に使用してから3年の歳月が必要なみたいだ。ここの場所は以前は花壇としてお花が植えられていたが、3年前に農薬をかけて程なくして栽培されなくなったため、有機栽培同好会として譲り受けたはいいが今月まで有機栽培ができなかったらしい。

 

「…それで、俺は何をすればいいですか?」

 

「おっ!やる気出てきたね!!先生は嬉しいよ。…そうだなあ、まずは才場くんが持ってきてくれたこの土をプランターに入れてくれる?」

 

「了解しました。…そういえば俺が持ってきたこの培養土?ってどんな土なんですか?」

 

「培養土っていうのはねっ!一般的な土のことだよ!培養土の中にはすごいたくさんの種類があって、育てたい野菜や今の畑の土の状況を見てどの土にするか選んでいくの!…だよね?みかん??」

 

「うん、そうだね林檎。…才場くんが持ってきてくれたこれは、有機栽培用に配合された培養土で、有機物がいっぱい入っています。プランターで栽培できる野菜だと手軽に有機栽培ができるから便利ですよね。」

 

「もっと凝りたかったら酵素を投入したりって方法もあるけど…。今回は入門編ってことで!」

 

こうして、俺と彼女たちはプランターに土を入れ、その上から種をまいた。

 

「種って結構奇抜な色をしているじゃない?ピンクとか白とか。」

 

「確かに種ってカラフルなものが多いね!?どうしてなんですか??」

 

確かに昔、小学校の時おいしそうだと思ったことがあるなあ…。

 

「あれはね、農薬と肥料が種にコーティングされているからで、本来、種っていうのは、もっと地味で土を見分けがつかなくなりそうなものばかりなのよ。だから今回は、有機栽培のために、コーティングされていない種を選んだの。意外と市販の有機栽培野菜でも、種についている農薬、肥料は見逃されてることが多いのだけれどね。」

 

そうなのか。…というか、そこまでこだわって何かいいことでもあるのだろうか?

 

二十日大根を植える作業自体は、1時間もかからずに終わった。しかし、その後中庭の畑と、花壇の手入れ、そして校庭の端っこにある畑の紹介(と言ってもまだ土と雑草しかなかったが)が終わる頃には、17時半をまわろうとしていた。

 

「んんっー!やっと終わったね!!なんだかお腹空いてきちゃったよ!」

 

「確かにちょっとお腹空いてきたね…。お母さんは今日家にいるみたいだし、どっか外でご飯でも食べてく?」

 

「いいねいいね!…あ、じゃあ、才場くんの入部を祝って歓迎会でもしちゃう!?」

 

なんで、陽キャってすぐに○○会ってのをしたがるんだ。人を巻き込まないでくれよ…。

 

「悪い、俺はもう帰るよ。久々に体動かして疲れたし、明日も朝早いしね。」

 

後、これ以上俺といるのはよくないし…。

 

「確かに、いきなり色々作業を手伝ってもらっちゃって悪かったね。明日もあるし、才場くんの歓迎会はまた今度ってことで!」

 

そう、アグリ先生が言うと、双子もそれぞれ同意してくれた。アグリ先生に感謝を感じつつ、ここで、有機栽培同好会の今日の活動が終わりとなった。

 

◆◆◆

 

 

次回に続く

 

 

前回

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次回

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